いつもキーンやジーといった煩わしい音が聞こえる、耳鳴りとは周りに明らかな音がない状態でこのような音を感じる感覚です。なぜ耳鳴りが生じるのかはまだ分かっていません。また、その検査法や治療法も確立されていません。耳鳴りの多くは何らかの難聴に伴って発生します。難聴のなかでは突発性難聴や急性音響性難聴、メニエール病などの急に難聴になる病気で耳鳴りが生じることが多く、80%以上に耳鳴りが認められます。これらの病気では内耳の音を聞くセンサー(有毛細胞)にダメージを受けることから、有毛細胞が傷つくことが耳鳴りの発生に大きく関与していることは間違いないようです。治療としては、耳鳴りの原因を治す治療と耳鳴りによる苦痛や煩わしさを軽くする対症療法があります。突発性難聴などの急性感音難聴に合併する耳鳴では原因の病気を回復させることで耳鳴りも改善することが期待できます。しかし、耳鳴りの多くは回復が難しい慢性感音難聴によるものであり、この場合は耳鳴りに対する治療も対症療法が中心となります。種々の薬物療法が行われますが、特効薬のようなものはまだありません。動脈硬化などによる循環障害の合併が疑われる場合は脳循環改善薬を、肩や首のこりが合併する場合は筋弛緩薬を、不安やうつ傾向がある場合は抗不安薬や抗うつ薬が用いられます。耳鳴りによる苦痛の程度は心理的なことにも左右されます。カウンセリングなどによる心理治療、あるいはTRTというカウンセリングとTCIというノイズ発生器(補聴器のように耳に掛ける器械)を使用した音響療法なども注目されております。耳鳴りによる苦痛の軽減には有効ですが、根本的に耳鳴りを止める治療法ではありません。今後、根本的な治療法の開発が望まれます。